退去の手続きと敷金の返還(Ending a tenancy)
借り主が部屋を出るときは、州の法律で決まった期間の前までに、書面で大家に知らせます。BCでは「まる1か月」、オンタリオ州では月払いなら60日以上前が基本です。決まった期間の契約は途中で終わらせにくい点にも注意が必要です。退去の流れと敷金の返還をまとめました。
条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。
退去の通知の基本
カナダでは、借り主が部屋を出るときも、州の法律で決まった期間をおいて大家に知らせる必要があります。口頭ではなく書面で出し、控えを残すのが基本です。
契約には、大きく2つの種類があります。
- 期間の決まっていない契約(月ごとに続く契約。Periodic tenancy、Month-to-month)
- 期間の決まった契約(1年契約など。Fixed-term tenancy、Lease)
期間の決まった契約は、途中で一方的に終わらせることが原則としてできません。どちらの契約かは、契約書で確かめておきます(「賃貸契約の読み方」)。
BC
BC州政府によると、月ごとの契約を終わらせるには、書面の通知が次の条件を満たして大家に届く必要があります(BC州政府のページ(新しいタブで開く))。
- 退去日の1か月以上前に届く
- 家賃の支払日より前に届く
これは「30日前」ではなく、まる1か月の家賃期間が必要という意味です。たとえば家賃を毎月1日に払う場合、3月31日に退去するには、通知が3月1日より前(2月末まで)に大家に届いている必要があります。通知には、名前、日付、住所、退去日、署名を書きます。
期間の決まった契約は、次の場合を除いて、決まった日より早く終わらせられません。
- 大家と借り主が「Mutual Agreement to End Tenancy(RTB-8)」で書面で合意したとき
- 家族・同居人からの暴力から逃れる場合や、長期介護の施設に入る判定を受けた場合などの特別な事情
- 仲裁人が命じたとき
期間が終わるときに出て行きたい場合も、同じように1か月以上前、家賃の支払日より前に書面の通知が届くようにします。何もしなければ、新しい期間の契約を結ぶか、月ごとの契約として続きます。
オンタリオ州
オンタリオ州の大家・借家人委員会(LTB)の案内では、借り主は「Tenant’s Notice to Terminate the Tenancy(Form N9)」で通知します(LTBの案内(新しいタブで開く))。
| 契約の種類 | 通知の期間 | 退去日 |
|---|---|---|
| 期間の決まった契約 | 期間が終わる60日以上前 | 契約の最終日 |
| 月ごとの契約 | 60日以上前 | 家賃の月の最終日 |
| 週ごと・日ごとの契約 | 28日以上前 | 家賃の週の最終日 |
郵送で通知するときは、さらに5日を足します。期間の決まった契約が終わったあと、何もしなければ月ごとの契約として続きます。
期間の途中で出たい場合は、大家と「Agreement to Terminate a Tenancy(Form N11)」で合意する、大家の同意を得て契約をほかの人に譲る(Assignment)などの方法があります。正しい通知をせずに出ると、次の借り主が決まるか、本来の終了日が来るまでの早いほうまで、家賃を払う責任が残ります。
オンタリオ州では、敷金ではなく「最後の月の家賃の前払い(Rent deposit)」を入居時に払っていることが多く、これは最後の月の家賃に充てられます。
ケベック州
ケベック州の住宅行政審判所(Tribunal administratif du logement、TAL)によると、契約の期間中は、離婚、失業、家の購入などを理由に、借り主がいつでも契約を終わらせることはできません(TALのページ(新しいタブで開く))。期間中に解約できるのは、次のような限られた場合です。
- 低家賃住宅(Low-rental housing)に入居が決まった
- 障害のため住み続けられない
- 配偶者からの暴力、性暴力、子どもへの暴力がある
- 高齢者が高齢者住宅などに入居する
大家と合意すれば、期間中でも契約を終えられます。
期間の終わりに出るときは、「契約を更新しない」旨の通知(Notice of non-renewal)を出します。ケベック州民法典(Code civil du Québec、C.c.Q.)では、大家から契約条件の変更の通知を受け取っていない借り主は、大家が変更を通知するときと同じ期限のうちに、更新しない旨を大家に通知できます(第1946条。LégisQuébecの民法典(新しいタブで開く))。その期限は第1942条で次のように決まっています。
| 契約の種類 | 通知の期限 |
|---|---|
| 期間が12か月以上の契約 | 期間が終わる3か月以上前、6か月以内 |
| 期間が12か月未満の契約 | 期間が終わる1か月以上前、2か月以内 |
| 期間の決まっていない契約 | 1か月以上前、2か月以内 |
| 部屋(Room)の賃貸 | 10日以上前、20日以内 |
たとえば7月1日から翌年6月30日までの1年契約なら、通知は1月1日から3月31日までに大家に届く必要があります。早すぎても遅すぎても期限から外れる点が、ほかの州と違います。どちらからも通知がなければ、期間の決まった契約は同じ条件で自動的に更新されます。更新後の期間は元と同じで、元の期間が12か月を超えるときは12か月です(第1941条)。
大家から家賃の値上げなど条件の変更の通知を受け取った場合は、受け取ってから1か月以内に、変更を断るか、退去するかを大家に知らせます。何も返事をしなければ、変更に同意したとみなされます(第1945条)。
ケベック州では大家が敷金を求められないため、退去時に敷金を返してもらう手続きもありません。
敷金の返還
敷金のルールは州ごとに違います。詳しくは「敷金とペット敷金」にまとめています。
| 州 | 退去時の扱い |
|---|---|
| BC | 契約が終わった日と、新しい住所を書面で受け取った日の遅いほうから15日以内に、大家は返すか、RTBに申し立てる |
| オンタリオ州 | 最後の月の家賃の前払いは、その月の家賃に充てる |
| ケベック州 | 敷金がないので返還の手続きもない |
退去時の点検の記録は、敷金から差し引かれるかどうかに関わります(「入居時と退去時の点検」)。
州・準州ごとの違い
| 州 | 月ごとの契約の通知 | 期間の決まった契約 |
|---|---|---|
| BC | 1か月以上前、家賃の支払日より前に届く | 原則として途中で終われない。期間の終わりに出るときも1か月前の通知 |
| オンタリオ州 | 60日以上前(Form N9) | 期間が終わる60日以上前に通知。途中で出るときは合意(N11)か契約の譲渡など |
| ケベック州 | 1か月以上前、2か月以内 | 期間中は限られた事情か合意がないと終われない。期間の終わりに出るときは、12か月以上の契約なら終わる3〜6か月前に更新しない旨を通知 |
そのほかの州・準州は「州ごとの賃貸法と相談先」から州の窓口を確かめてください。
手順
- 契約書で、契約の種類(月ごとか、期間が決まっているか)と終わりの日を確かめる。
- 州で決まった期間に間に合うように、書面で通知する(オンタリオ州はForm N9)。
- 通知の控えと、渡した日・方法の記録を残す。
- 退去日までに掃除をし、大家と一緒に退去時の点検をする。
- 鍵を返し、新しい住所(Forwarding address)を書面で伝える。
- 期限までに敷金が返ってこなければ、州の窓口に相談する。
日本とのちがいと注意点だよ!
- 日本の賃貸契約では「1か月前に解約を申し入れる」と決めた契約が多いですが、カナダでは州の法律で通知の期間が決まっています。オンタリオ州の月ごとの契約は60日以上前です。
- BCの「1か月前」は30日前ではなく、まる1か月の家賃期間です。家賃の支払日を基準に、早めに通知してください。
- 1年契約などは、途中で一方的に解約しにくい仕組みです。帰国や転勤の可能性がある人は、契約前に期間と途中で出るときの条件を確かめておくと安心です。また貸しや契約の譲渡は「また貸しと契約の譲渡」で扱います。
- 大家から退去を求められた場合のルールは「退去通知と立ち退きのルール」にまとめています。
- 個別の判断は、州の窓口や弁護士に相談してください。
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