退去通知(Eviction)と立ち退きのルール
カナダでは、大家が借り主に出て行ってもらうには、州の法律で決まった理由と書式の通知が必要です。通知を受け取っても、すぐに出て行く義務があるとは限らず、異議を申し立てる期限があります。BC、オンタリオ州、ケベック州の主なルールをまとめました。
条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。
退去通知の基本
カナダの賃貸のルールは州・準州の法律で決まっていて、大家が自由に借り主を追い出すことはできません。多くの州に共通するのは次の点です。
- 大家は、法律で認められた理由があるときだけ、契約を終わらせる通知を出せる。
- 通知は、州が決めた書式で、決められた期間をおいて出す。
- 借り主は、通知に納得できなければ、州の窓口に異議を申し立てられる。
- 借り主が出て行かないとき、大家は州の窓口の命令を得る必要がある。大家が自分で鍵を替えたり、荷物を出したりすることは認められていない。
退去の理由は、大きく「借り主の側に原因があるもの」(家賃の滞納、損害、迷惑行為など)と、「借り主に落ち度がないもの」(大家や家族が住む、建て替え・大規模な改修など)に分かれます。
BC
BCでは、通知の種類ごとに書式と、借り主が異議を申し立てられる期限が決まっています(BC州政府のページ(新しいタブで開く))。
| 通知 | 主な理由 | 異議の期限 |
|---|---|---|
| 10 Day Notice(RTB-30) | 家賃の未払い | 5日 |
| One Month Notice(RTB-33) | 契約や法律の違反など | 10日 |
| Three Month Notice(RTB-32L) | 大家か近い家族が住む | 21日 |
| Three Month Notice(RTB-32P) | 買い手が住む | 21日 |
| Four Month Notice(RTB-29) | 取り壊し・用途の変更 | 30日 |
- 大家が住む・買い手が住むなどの通知は、RTBのウェブサイト(Web portal)で作らなければなりません。
- 大家の使用の通知は、2025年6月18日以降は3か月前までです。
- 大家や家族が住むなどの理由(住宅賃貸法第49条)で通知を受けた借り主は、通知の日までに家賃1か月分の補償を受け取れます(第51条)。
- 通知に書いた目的で使わなかった場合などは、大家は家賃12か月分を払わなければならないことがあります。
異議の申し立てが退けられると、大家に明け渡しの命令(Order of Possession)が出されます。手続きは「BC州の賃貸」にまとめています。
オンタリオ州
オンタリオ州では、大家は大家・借家人委員会(LTB)の書式で通知します(LTBの案内(新しいタブで開く))。
| 書式 | 主な理由 | 通知の期間 |
|---|---|---|
| N4 | 家賃の未払い | 7日。大家がLTBに申し立てる前に、未払い分と新たに期限が来た家賃を全額払えば通知は無効になる |
| N5 | 損害・ほかの住人への迷惑 | 20日(1回目) |
| N12 | 大家・家族・買い手が住む | 60日。終了日は家賃の期間か契約の最終日 |
| N13 | 修理・取り壊し・用途の変更 | 120日。終了日は家賃の期間か契約の最終日 |
- 通知を受け取っても、借り主はすぐに出て行く必要はありません。退去に同意するか、LTBが退去の命令を出すまでは住み続けられます。
- 借り主が出て行かなければ、大家はLTBに申し立てます。退去を実際に執行できるのは州の執行官(Sheriff)だけです。
- 大家が勝手に鍵を替えることは原則として禁止されていて、個人の違反には最大C$100,000の罰金があります。
N12・N13の補償
落ち度のない理由での退去では、多くの場合、大家は借り主に補償を払います。N12では、終了日までに家賃1か月分を払うか、借り主が受け入れる別の部屋を用意します。
ただし、2026年9月21日以降に出されたN12で、終了日が通知から120日以上あとになっている場合は、この補償はいりません(2026年10月時点)。この例外はN12だけで、N13の補償には当てはまりません。
ケベック州
ケベック州では、建物の持ち主が、自分や親・子などが住むために住まいを取り戻すこと(Reprise de logement、Repossession)ができます(TALのページ(新しいタブで開く))。
- 契約期間が6か月を超える場合、持ち主は契約が終わる6か月以上前に書面で知らせます。
- 借り主は、通知を受けてから1か月以内に返事をします。返事をしないと、出て行くことを断ったものとみなされます。
- 借り主が断ったときは、持ち主が本当に住むつもりであることを、住宅行政審判所(Tribunal administratif du logement、TAL)に示さなければなりません。
- TALは、引っ越し費用に相当する補償など、妥当な条件を付けられます。
- 借り主か配偶者が65歳以上、10年以上住んでいる、収入が一定以下、という条件をすべて満たす場合は、原則として取り戻しが認められません。
ケベック州の窓口は「ケベック州の賃貸(TAL)」でも扱います。
州・準州ごとの違い
| 州 | 窓口 | 家賃未払いの通知 | 大家・家族が住むときの通知 |
|---|---|---|---|
| BC | 住宅賃貸局(RTB) | 10日(異議は5日以内) | 3か月(家賃1か月分の補償) |
| オンタリオ州 | 大家・借家人委員会(LTB) | 7日(N4、2026年10月時点) | 60日以上(N12。原則家賃1か月分の補償) |
| ケベック州 | 住宅行政審判所(TAL) | — | 契約終了の6か月以上前(契約が6か月を超える場合) |
ほかの州・準州の窓口は「州ごとの賃貸法と相談先」にまとめています。
手順
- 通知を受け取ったら、日付、書式の番号、理由、終了日を確かめる。
- 州の書式でない通知や、期間が足りない通知でないかを、州の窓口に確かめる。
- 納得できなければ、期限内に異議を申し立てる(BCは5〜30日など、通知によって違う)。
- 契約書、家賃の支払い記録、大家とのやりとりを集めて審理に備える。
- 退去する場合は「退去の手続きと敷金の返還」の流れで進める。
日本とのちがいと注意点だよ!
- 日本では退去をめぐる争いは裁判所で扱うのが一般的ですが、カナダの多くの州では、州の審判機関(BCのRTB、オンタリオ州のLTB、ケベック州のTAL)が扱います。
- 通知を受け取っても、すぐに出て行かなければならないとは限りません。一方で、異議の期限は短いもの(BCの家賃未払いは5日)もあるので、早めに動くことが大切です。
- 大家が勝手に鍵を替える、荷物を出すといった行為は認められていません。困ったときは州の窓口に相談してください。
- オンタリオ州のN12の補償のように、2026年にも変更がありました。通知を受けたときは、州の最新のページで確かめてください。
- 個別の判断は、州の窓口、弁護士、リーガルクリニックに相談してください。
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