カナダを離れるときの税金(Departure tax・非居住者になったとき)
カナダの税務上の居住者でなくなると、その年は出国日までの居住期間について申告します。株式など一部の資産は、出国時に時価で売ったとみなされ(いわゆる出国税、Departure tax)、利益が出れば申告が必要です。出国後のカナダの収入には、ふつう25%の源泉税がかかります。
条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。
居住者でなくなる日
カナダを引き払って日本へ帰国するなどして、カナダの税務上の居住者でなくなる人を、カナダ歳入庁(Canada Revenue Agency、CRA)は「emigrant(出国者)」と呼びます。居住者かどうかの考え方は「税務上の居住者の判断」で扱います。
CRAの出国者向けのページ(新しいタブで開く)によると、ふつうは次のうち最も遅い日に非居住者になります。
- 本人がカナダを出た日
- 配偶者またはコモンローパートナーと扶養家族がカナダを出た日
- 新しい国の居住者になった日
たとえば本人だけが先に帰国し、家族がカナダに残っている間は、まだ居住者のままと判断されることがあります。
出国する年の確定申告
税金を払う必要があるときや還付を受けたいときは、出国した年の確定申告書をCRAに出します。使うのは、出国日に住んでいた州・準州の申告書です。期限はふつうの確定申告と同じです(「確定申告の基本と期限」)。
申告の必要がない場合でも、CRAはカナダを出た日をできるだけ早く知らせるよう求めています。カナダの銀行や雇用主など、お金を払う側にも、非居住者になったことを伝えます。
自分が居住者かどうか判断がつかないときは、CRAに判断を求める様式 NR73(Determination of Residency Status (leaving Canada))があります。
出国時に「売ったとみなされる」資産(Departure tax)
カナダを出るとき、一部の資産は、実際には売っていなくても、出国した日の時価(fair market value、FMV)で売り、すぐに同じ額で買い直したとみなされます。これをみなし譲渡(deemed disposition)といい、日本語では出国税と呼ばれることがあります。値上がりしていれば、その差額をキャピタルゲインとして出国の年の申告に入れます。
CRAの資産のみなし譲渡のページ(新しいタブで開く)によると、次のものはみなし譲渡の対象になりません。
- カナダにある不動産、カナダの資源・森林の資産
- RRSP、RRIF、TFSA などの登録口座
- 年金制度や年金保険(annuity)など
つまり、ふつうの証券口座で持っている株式や投資信託などが主な対象になります。
使う様式
| 様式 | 使うとき |
|---|---|
| T1161(List of Properties by an Emigrant of Canada) | 出国した時点で持っていた資産の時価の合計が C$25,000 を超えるとき。持っている資産を一覧にします |
| T1243(Deemed Disposition of Property by an Emigrant of Canada) | みなし譲渡によるキャピタルゲイン(または損失)を計算するとき |
| T1244 | みなし譲渡にかかる税金の支払いを、実際に売るときまで先延ばしにすることを選ぶとき |
先延ばしを選び、対象の連邦税が C$16,500 を超える場合は、CRAに十分な担保(security)を出す必要があります(2026年10月時点)。
出国後のカナダの口座と収入
TFSA と RRSP
CRAによると、TFSAは出国後も持ち続けることができ、運用益や引き出しはカナダで非課税のままです。ただし、非居住者の間は入金できる枠(contribution room)が増えません(「非課税貯蓄口座(TFSA)」)。
非居住者の間に入金すると、その入金分に月1%の税金がかかります(2026年10月時点)。この税金は、その入金分を全額引き出した月か、カナダの居住者に戻った月まで、毎月かかります。一部だけ引き出しても税額は減りません。税金がかかった年の翌年の6月30日までに、TFSA申告書(RC243)と付表B(RC243-SCH-B)を出して納めます(CRAのページ(新しいタブで開く))。入金できる枠を超えた入金には、これとは別に月1%の税金もかかります。
RRSPから住宅購入(Home Buyers’ Plan、HBP)や学び直し(Lifelong Learning Plan、LLP)のために引き出していた人には、出国時の特別な決まりがあります(「退職貯蓄(RRSP)」)。
非居住者の源泉税
出国後にカナダから受け取る収入には、非居住者の源泉税(Part XIII tax)がかかります。CRAの非居住者のページ(新しいタブで開く)によると、税率はふつう25%で、カナダと相手国との租税条約で下がることがあります(2026年10月時点)。主な対象は次のとおりです。
- 配当、家賃、使用料
- 年金、老齢年金(OAS)、カナダ年金(CPP)・ケベック年金(QPP)の給付
- 退職手当、RRSP・RRIFからの支払い、年金保険の支払い
カナダの家を貸して家賃を受け取る人は、第216条の選択(section 216)で申告書を出す方法があります。年金などは第217条の選択(section 217)で、源泉税の代わりに申告する方法があります。どちらが有利かは人によって違うため、税理士に相談します。日本とカナダの条約については「日加租税条約」で扱います。
給付
非居住者になると、ふつうはカナダ児童手当(CCB)や食料品・生活必需品給付(Canada Groceries and Essentials Benefit)を受け取れません。出国後に振り込まれたときは、すぐにCRAに連絡するよう案内されています。
手順
- 出国日と、家族の出国日、日本の居住者になる日を整理する。
- 判断がつかなければ、NR73でCRAに居住者かどうかの判断を求めることを検討する。
- 持っている資産を一覧にし、出国日の時価を調べる。合計が C$25,000 を超えればT1161を用意する。
- みなし譲渡の対象の資産があれば、T1243で利益や損失を計算する。税金の支払いを先延ばしにするならT1244を検討する。
- 銀行、証券会社、雇用主などに非居住者になったことを伝える。給付が止まっているかも確かめる。
- 翌年の期限までに、出国した年の確定申告書を出す。
日本とのちがいと注意点だよ!
- みなし譲渡の利益の申告(T1243)と、資産の一覧(T1161、時価の合計が C$25,000 を超えるとき)は別の様式です。両方が必要になることがあります。
- 日本の国税庁は、国内に「住所」(生活の本拠)があるか、引き続き1年以上「居所」がある個人を居住者としています(国税庁 タックスアンサー No.2875(新しいタブで開く))。帰国して日本の居住者になる日と、カナダの非居住者になる日がずれることがあり、二重課税の調整には租税条約が関わります。
- 帰国後にRRSPを引き出したり、カナダの家を貸したりすると、カナダと日本の両方の税金が関わります。手続きを決める前に、CRAや、両国の税に詳しい税理士に相談します。
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