日加租税条約(Canada-Japan Income Tax Convention)
日本とカナダの租税条約は、同じ所得に両国で税金がかかる二重課税を防ぐための取り決めです。両国の居住者に当たる人がどちらの居住者になるかの決め方、配当・利子・使用料の税率の上限、短期の出張の給与などを定めています。年金の社会保険料の二重加入は、別の日加社会保障協定で扱います。
条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。
租税条約とは
日本とカナダの間には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約」(Canada-Japan Income Tax Convention)があります。同じ所得に日本とカナダの両方で税金がかかる「二重課税」を防ぎ、脱税を防ぐための取り決めです。
財務省の租税条約の一覧(新しいタブで開く)によると、条約の経緯は次のとおりです。
| 署名 | 発効 | |
|---|---|---|
| 条約 | 1986年5月7日 | 1987年11月14日 |
| 改正議定書 | 1999年2月19日 | 2000年12月13日 |
カナダ財務省(Department of Finance Canada)は、改正を反映した条約の統合版(新しいタブで開く)を公開しています。ただし統合版は参照用で、公式の効力はないと注記されています。
条約は税金の分け方の大きな決まりです。実際の税額の計算や申告は、それぞれの国の法律と手続きで行います。
両国の居住者に当たるとき
日本の基準でもカナダの基準でも居住者に当たる人は、条約上どちらの国の居住者とするかを決めます。条約は、両国の権限ある当局(competent authorities)が合意で決めるとしています。議定書は、個人について、次の順に見ていくことを定めています。
- 恒久的な住まい(permanent home)がどちらの国にあるか
- 両方にあれば、生活の利害の中心(centre of vital interests)がどちらにあるか
- 決められなければ、ふだん住んでいる(habitual abode)のはどちらか
- それでも決められなければ、国籍
条約上日本の居住者とされると、カナダでは「みなし非居住者」として扱われます。カナダ側の居住者の考え方は「税務上の居住者の判断」で扱います。
所得の種類ごとの主な決まり
給与(短期の出張など)
給与は、ふつう実際に働いた国で課税できます。ただし、一方の国の居住者が他方の国で働いた場合でも、次の3つをすべて満たすと、住んでいる国だけで課税されます。
- その暦年に、働いた国にいた日数の合計が183日以下
- 給与を払う雇用主が、働いた国の居住者ではない
- 給与を、雇用主が働いた国に持つ恒久的施設(permanent establishment)などが負担していない
配当・利子・使用料
所得を受け取る人が住む国で課税できるほか、所得が生まれた国でも、次の率を上限に課税できます。
| 所得 | 生まれた国での税率の上限 |
|---|---|
| 配当 | 15%(議決権のある株式を6か月以上、25%以上持つ会社が受け取る場合は5%) |
| 利子 | 10% |
| 使用料(著作権・特許・商標など) | 10% |
カナダの非居住者がカナダから受け取る配当などには、ふつう25%の源泉税(Part XIII tax)がかかりますが、CRAの非居住者のページ(新しいタブで開く)は、租税条約で率が下がることがあるとしています。
留学生・研修生
他方の国の居住者だった学生や事業の見習い(business apprentice)が、教育や訓練だけのために滞在している間、生活費・教育費・訓練費として受け取るお金は、滞在している国で非課税です。そのお金が、滞在している国の外から送られてくることが条件です。日本の家族からの仕送りなどが当たります。カナダで働いて得た給与は、この決まりの対象ではありません。
政府の仕事の報酬
国や地方公共団体の仕事の報酬は、原則として払う側の国だけで課税されます。例外もあります。この決まり(第18条)は、退職年金を対象から除いています。
年金(私的年金・公的年金)
この条約には、年金だけを扱う条がありません。財務省が公開している統合条文(新しいタブで開く)とカナダ財務省の統合版で確かめると、ほかの条に定めのない所得は、第20条(その他の所得)が次のように扱います。
- 一方の国の居住者の所得で、ほかの条に定めのないものは、生じた場所を問わず、住んでいる国だけで課税する(第1項)。
- ただし、相手の国で生じたものは、相手の国でも課税できる(第3項)。
日本年金機構のカナダについての注意事項(新しいタブで開く)も、年金条項がないため、それぞれの国で支払われる年金は支払う国の税法で課税されると説明しています。両方の国で課税されたときは、下の外国税額控除で二重課税を調整します。
カナダの居住者が日本の年金を受け取ると、カナダでも申告が必要です。CRAの外国の年金のページ(line 11500)(新しいタブで開く)は、受け取った総額をカナダ・ドルに換算して申告し、外国で払った税は外国税額控除(line 40500)の対象になり得るとしています。日本の年金の受け取り方は「カナダで日本の年金を受け取る」で扱います。
大学などの教授・教員
この条約には、教授・教員の報酬を免税にする条はありません。議定書6には、大学や学校で教えるために相手の国に入国し、2年以内滞在する教授・教員の教育の報酬を、滞在する国で免税にする規定があります。ただし対象は、条約の効力発生(1987年11月14日)の前に入国した人だけです。いまカナダで教える人の報酬には、この特例はありません。給与の決まり(第15条)や、政府の仕事の報酬の決まり(第18条)などで扱います。
二重課税をなくす方法
条約は、二重課税をそれぞれの国の外国税額控除の仕組みでなくすことを定めています。
- カナダ側:カナダの居住者が国外の所得を申告し、その国で税金を払っていれば、ふつうは連邦の外国税額控除(Federal foreign tax credit)を、様式 T2209で計算して申告できます。CRAの外国税額控除のページ(新しいタブで開く)は、租税条約が対象になるかどうかに影響することがあるとしています。
- 日本側:日本の居住者が外国で所得税に当たる税金を払ったときは、外国税額控除で日本の所得税から差し引く仕組みがあります。確定申告書に明細書をつけて申告します。
条約どおりでない課税を受けたと考える人は、住んでいる国の権限ある当局に申し立てる手続き(相互協議、Mutual Agreement Procedure)があります。申し立ての期限は、条約では最初の通知から2年以内でしたが、財務省の統合条文によると、BEPS防止措置実施条約第16条によって3年以内に変わっています(2019年12月1日以後に申し立てた事案に適用)。
手順
- その年に、自分が日本とカナダのどちらの居住者に当たるかを整理する。両方に当たりそうなら、条約の決まりを確かめる。
- 受け取った所得の種類(給与、配当、利子、家賃など)と、どちらの国で生まれた所得かを整理する。
- 生まれた国で差し引かれた税金の額と、条約の上限の率を比べる。
- 住んでいる国の申告で、外国税額控除などを使う。カナダではT2209を使います。
- 判断に迷うときは、CRA、日本の税務署、両国の税に詳しい税理士に相談する。
日本とのちがいと注意点だよ!
- 年金の保険料(カナダ年金制度と日本の年金)の二重加入の調整は、租税条約ではなく別の「日加社会保障協定」で扱います。
- 日本の外国税額控除は、国税庁 タックスアンサー No.1240(新しいタブで開く)によると、居住者が外国で所得税に当たる税金を納めたときに使える仕組みで、確定申告が必要です。
- 日本の収入や資産をカナダで申告するときの決まりは「日本の収入・資産の申告」、カナダを出る年の税金は「カナダを離れるときの税金」で扱います。
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