1982年憲法と権利と自由の憲章(Constitution Act, 1982)
1982年4月17日、1982年憲法法が施行され、権利と自由の憲章が憲法に書き込まれました。憲法の改正の手続きもカナダの中で完結するようになりました。法律の構成、憲章の主な中身、先住民の権利、改正の手続きをまとめます。
1982年に何が変わったか
1867年の連邦結成のときの憲法(いまの1867年憲法法)は、イギリス議会がつくった法律でした(連邦結成(1867年))。1982年、新しく「1982年憲法法(Constitution Act, 1982)」ができ、次のことが憲法に書き込まれました。
- 権利と自由の憲章(Canadian Charter of Rights and Freedoms)
- 先住民の権利の承認
- 憲法を改正するときの手続き
カナダ文化遺産省(Canadian Heritage)の憲章のガイド(新しいタブで開く)によると、憲章は1982年4月17日に施行されました。市民権の学習用ガイド「Discover Canada」の「現代のカナダ」の章は、長い交渉のすえ、1982年の憲法の改正はケベック州の同意がないまま行われたと記しています。
1867年憲法法と1982年憲法法は、あわせて「1867年から1982年の憲法法(Constitution Acts, 1867 to 1982)」と呼ぶことができます(第60条)。どちらも連邦の法令サイト(新しいタブで開く)で読めます。
1982年憲法法の構成
| 部 | 内容 |
|---|---|
| 第1部 | 権利と自由の憲章(第1〜34条) |
| 第2部 | カナダの先住民の権利(第35条など) |
| 第3部 | 平衡化と地域間の格差 |
| 第4部・第4.1部 | 憲法会議 |
| 第5部 | 憲法の改正の手続き |
| 第6部 | 1867年憲法法の改正 |
| 第7部 | 総則 |
権利と自由の憲章の主な中身
憲章が定める主な権利は次のとおりです(条文の要点をまとめたもの)。
| 分野 | 主な中身 |
|---|---|
| 基本的自由(第2条) | 良心と信教の自由、思想・信条・意見・表現の自由(報道の自由を含む)、平和的な集会の自由、結社の自由 |
| 民主的権利(第3〜5条) | 市民は庶民院と州議会の選挙で投票し、立候補できる。議会の任期は総選挙から最長5年 |
| 移動の権利(第6条) | 市民はカナダに入国し、とどまり、出国できる。市民と永住者は、どの州にも移り住み、働くことができる |
| 法的権利(第7条〜) | 生命・自由・身体の安全の権利、不合理な捜索を受けないこと、公正な裁判など |
| 平等の権利(第15条) | 人種、出身の国や民族、肌の色、宗教、性別、年齢、心身の障害などによる差別を受けず、法のもとで平等 |
| 公用語(第16条) | 英語とフランス語は、連邦の議会と政府のすべての機関で同じ地位をもつ |
| 少数言語の教育の権利(第23条) | 州の中で少数派にあたる英語またはフランス語を母語とする市民などが、子どもにその言葉で初等・中等教育を受けさせる権利 |
第1条は、憲章の権利と自由は、自由で民主的な社会で正当と示せる、法律で定めた合理的な制限にだけ服すると定めています。第27条は、憲章を多文化の伝統と調和させて解釈することを定めています(多文化主義)。公用語については公用語(英語とフランス語)にまとめています。
施行の時期
第15条(平等の権利)だけは、ほかの条文より3年遅れて、1985年4月17日に効力をもちました。また第59条は、第23条第1項(a)のケベック州への適用は、別に布告で決める日からとしています。
憲章が当てはまる相手
憲章のガイドによると、第32条は、憲章が適用されるのは政府であり、個人や企業、その他の団体ではないことを明らかにするものです。政府によって憲章の権利を侵されたと考える人は、裁判所に救済を求めることができます(第24条)。
適用除外条項(第33条)
第33条は「適用除外条項(notwithstanding clause)」と呼ばれることがあります。連邦議会や州議会は、法律の中ではっきり宣言すれば、第2条と第7〜15条の規定にかかわらずその法律を働かせることができます。この宣言は5年で効力を失います(それより早い日を宣言の中で決めることもできます)。
先住民の権利(第35条)
第35条第1項は、カナダの先住民がすでにもっている権利と条約上の権利を「承認し、確認する」と定めています。第2項は、ここでいう先住民には、インディアン、イヌイット、メティスの人々が含まれるとしています。条約については条約と土地の権利で扱います。
憲法の最高法規性と改正の手続き
第52条第1項は、カナダ憲法はカナダの最高法規であり、憲法に反する法律は、反する範囲で効力をもたないと定めています。
憲法の改正は、総督の布告によって行われます。一般的な手続き(第38条第1項)では、次の両方が必要です。
- 上院と庶民院の決議
- 州の3分の2以上の州議会の決議。ただし、その州の人口の合計が、直近の国勢調査で全州の人口の50%以上であること
国王・総督・州副総督の職、英語とフランス語の使用、最高裁判所の構成、改正の手続きそのものなど一部の事項は、上院・庶民院に加えて、すべての州の州議会の決議が必要です(第41条)。
日本との違い・注意点
- カナダの憲法は一つの文書ではなく、1867年憲法法と1982年憲法法などを合わせたものです。日本国憲法のような一つの法典とは形が違います。
- 憲章は政府に対するきまりで、個人や企業などの民間の相手には適用されません。
- 第33条により、議会が期限つきで一部の権利の規定を適用しない法律をつくることができます。ニュースでこの条項が話題になるのはこのためです。
- 個別の権利の問題は、弁護士や州の人権機関などの窓口に相談することになります。憲章の中身の詳しい説明は権利と自由の憲章で扱います。
この記事をシェアする