日本人のためのカナダ情報
仕事・税金 / 起業・個人事業

業務委託と雇用の違い(Employee or self-employed)

在住ワーホリ
ひとことで言うと

カナダでは、働く人が「雇われている人(Employee)」か「自営業の人(Self-employed)」かを、契約書の名前ではなく、実際の働き方で判断します。CRAは、指揮命令(Control)、道具、外注、お金のリスクなどを見て判断します。わからないときは、CRAに CPP/EI の判定(Ruling)を求められます。

目次
  1. なぜ区別が大事か
  2. 判断の進め方(ケベック州以外)
  3. ケベック州の場合
  4. CRAに判定を求める(CPP/EI ruling)
  5. 手順
  6. 日本との違い・注意点
ここは大事だよ

条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。

なぜ区別が大事か

同じ仕事でも、雇われて働く人(Employee)と、自分の事業として仕事を受ける人(Self-employed、業務委託やフリーランス)とでは、税金や社会保険の扱いが大きく変わります。

カナダ歳入庁(Canada Revenue Agency、CRA)の手引き RC4110 Employee or Self-employed?(新しいタブで開く) によると、どちらに当たるかで次のことが決まります。

項目雇われている人(Employee)自営業の人(Self-employed)
所得税雇用主が給料から天引きする自分で申告して払う(「個人事業の始め方」)
カナダ年金制度(CPP)雇用主が天引きし、雇用主も同じ額を払う両方の分を自分で払う(「カナダ年金(CPP)」)
雇用保険(EI)天引きされ、条件を満たせば給付を受けられる原則として対象外。特別給付には任意で加われる(「雇用保険(EI)」)
書類T4(「T4などの税務書類」)請求書と自分の帳簿。申告は Form T2125

手引きでは、雇用主は従業員に払う給料から、CPPの掛け金、EIの保険料、所得税を差し引く責任があるとしています。業務委託として扱われると、これらの天引きはありません。

判断の進め方(ケベック州以外)

CRAは、契約書のタイトルや、当事者が「業務委託」と呼んでいるかどうかだけでは判断しません。次の2段階で見ます。

  1. 当事者の意図:雇用のつもりだったのか、自分の事業として仕事を受けるつもりだったのかを確かめます。
  2. 実際の働き方:その意図が、実際の働き方と合っているかを、下の要素で確かめます。

意図と実際が合わないときは、実際の働き方が重く見られます。

見られる主な要素

要素雇用に近い例自営業に近い例
指揮命令(Control)仕事の進め方・時間・場所を相手が決める進め方を自分で決める
道具や設備相手が用意する自分で用意し、修理・保険・維持の費用も自分で持つ
外注・手伝い本人が自分で働く必要があるほかの人を雇ったり外注したりできる
お金のリスク費用は相手が持つ仕事がなくても毎月の固定費がかかる、手伝いの人に自分で払う
投資と管理事業のための投資をしていない自分で資金を入れ、人を管理している
利益と損失決まった報酬を受け取る利益が出ることも、損をすることもある

指揮命令については、相手が実際に指示しているかどうかではなく、指示する権利があるかどうかが大事だと手引きは説明しています。

要素のどれか1つで決まるのではなく、全体を見て判断します。

ケベック州の場合

ケベック州では、州の民法典(Civil Code of Québec)の考え方にもとづいて判断します。手引きでは、当事者の意図、実際の働き方に加えて、それが民法典の定義と合うかを確かめる3つめの段階があるとしています。

中心になるのは「従属の関係(relationship of subordination)」で、払う側が働く人の活動を管理する能力・権限・権利を持っているかどうかを見ます。

ケベック州民法典(Code civil du Québec)(新しいタブで開く)は、2つの契約を次のように定めています。

契約民法典の定義
雇用契約(contrat de travail、第2085条)働く人が、報酬を受けて、期間を限って、相手(雇用主)の指揮または管理のもとで働く契約
請負・役務の契約(contrat d’entreprise ou de service、第2098条)働く人が、決まった代金で、物や知的な成果を仕上げる、またはサービスを提供する契約

請負・役務の契約では、仕事のやり方を自由に選べ、相手との間に仕事の進め方についての従属の関係はないとされています(第2099条)。

ケベック州の労働基準法での「salarié」

最低賃金や休暇などを定めるケベック州の労働基準法(Loi sur les normes du travail)(新しいタブで開く)は、第1条10°で、保護の対象になる「salarié(雇われて働く人)」を、雇用主のために働き賃金を受ける人と定めています。さらに、次の3つにすべて当てはまる契約で働く人も含めています。

  1. 相手が決めた枠組み・方法・手段で、決められた仕事をする。
  2. 仕事に使う材料・設備・商品などを相手が選び、相手の指示どおりに使う。
  3. 受け取ったお金から、仕事にかかった費用を引いた残りを報酬とする。

このため、「請負」として契約していても、ケベック州の労働基準法では雇われている人と同じように扱われることがあります。CRAの判断(税・CPP・EI)とは別の法律による判断です。個別の判断は、ケベック州の労働基準を扱う CNESST や弁護士に相談できます。

ケベック州の自営業の人は、出産・育児について州の制度(ケベック州親保険制度、QPIP)の給付を受けられる場合があります。州の税や年金(QPP)の扱いは、ケベック州歳入庁(Revenu Québec)の案内によります(「ケベック州の税金」)。

CRAに判定を求める(CPP/EI ruling)

自分が雇われているのか自営業なのか、はっきりしないときは、働く人も払う側も、CRAに CPP/EI の判定(Ruling)を求められます。

  • 払う側:My Business Account にログインして「Request a CPP/EI Ruling」を選ぶ
  • 払う側・働く人:My Account にログインして同じ項目を選ぶ(「CRA My Accountの登録と使い方」)
  • Form CPT1(Request for a CPP/EI Ruling)を出す
  • 代理人が Represent a Client から申し込む

判定を求められるのは、問題の年の翌年の6月29日までです(2026年10月時点の手引きの記載)。判定に不服があれば、通知を受けてから90日以内に、どちらの側も不服を申し立てられます。

手順

  1. 契約書や仕事の条件を読み、指揮命令、道具、外注の可否、報酬の決まり方を確かめる。
  2. 上の表の要素に当てはめて、どちらに近いかを整理する。
  3. はっきりしなければ、CRAの My Account などから CPP/EI の判定を求める(翌年6月29日まで)。
  4. 自営業として働く場合は、帳簿をつけ、T2125で確定申告をする(「自営業の確定申告と経費」)。必要ならビジネスナンバーも取る(「ビジネスナンバーとGST/HSTの登録」)。

ここに注意してね!

  • カナダでは、「業務委託契約」と書かれていても、実際の働き方が雇用に近ければ、CRAは雇用と判断することがあります。
  • 業務委託として扱われると、給料からの天引きがなく、CPPの掛け金を両方の分払う必要があり、EIの通常の給付も受けられません。報酬の額だけでなく、手取りや保険の違いを考えておくことが大切です。
  • 最低賃金、残業代、休暇などの労働者の権利は、州の雇用基準法で決まります(「州ごとの雇用基準」)。CRAの判断と州の判断は別の法律にもとづくため、労働条件の問題は州の窓口に相談します。
  • 就労許可やワーキングホリデーで働く人は、許可の条件で業務委託の仕事ができるかどうかも関わります。在留の条件は IRCC や RCIC(登録移民コンサルタント)に、税の判断は CRA や税理士に相談してください。

この記事をシェアする

次に読むならこれ

関連する記事

仕事・税金個人事業の始め方(Sole proprietorship)個人事業(Sole proprietorship)は、法人にしていない1人で持つ事業です。事業の所得は個人の確定申告で Form T2125 を使って申告し、自営業の人の申告期限は6月15日、納税の期限は4月30日です。GST/HSTの登録やCPPの掛け金、記録の6年間の保存も必要になります。仕事・税金自営業の確定申告と経費(Self-employment income and business expenses)自営業の人は、事業の収入から経費を引いた所得を Form T2125 で個人の確定申告に書きます。経費にできるのは、所得を得るためにかかった、妥当な、個人のものでない費用です。CPPの掛け金は雇用主の分も自分で払い、税額が一定を超えると年4回の分割納付が必要になります。仕事・税金州ごとの雇用基準(Employment standards)カナダの給料・労働時間・休暇・解雇などの最低限のルール(雇用基準)は、ほとんどの職場で州・準州の法律が決めます。銀行や航空など連邦管轄の職場だけは、連邦のカナダ労働法典(Canada Labour Code)が適用されます。申し立ての期限は州で違い、BCとアルバータ州は原則6か月、オンタリオ州は原則2年、ケベック州はお金の請求が原則1年、連邦管轄の職場は原則6か月です。仕事・税金雇用保険(EI、Employment Insurance)雇用保険(EI)は、自分の責任ではない理由で仕事を失った人などに、一時的に収入の一部を出す連邦の制度です。通常給付(Regular benefits)は、平均週給の最大55%(2026年は週C$729まで)を14〜45週受け取れます。最後に働いた日から4週間以内の申請が目安です。仕事・税金カナダ年金制度(CPP、Canada Pension Plan)ケベック州以外で働く18歳以上の人は、一定以上の収入があるとカナダ年金制度(CPP)の掛け金を払います。老齢年金(退職年金)は60歳から受け取れ、65歳で始めるのが標準です。受け取るには自分で申請します。仕事・税金市の事業許可(Business licence)カナダで事業を始めるときは、税金の登録とは別に、市の事業許可(Business licence)や登録が必要になることがあります。バンクーバー市は市内の事業すべてに許可を求め、カルガリー市は登録と場所の承認を求めます。トロント市は業種ごとに許可や検査が決まっています。