職場のハラスメントと差別(Human rights・人権委員会)
カナダでは、人種、出身、宗教、性別、年齢、障害などを理由にした職場での差別やハラスメントが、人権の法律で禁じられています。ほとんどの職場は州・準州の人権の法律と窓口、銀行や航空など連邦管轄の職場はカナダ人権法とカナダ人権委員会の対象です。申し立てには期限があります。
条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。
人権の法律が禁じていること
カナダでは、仕事に関係のない理由で人を不利に扱う差別(discrimination)や、嫌がらせ(harassment)が、人権の法律で禁じられています。雇うかどうか、給料、昇進、解雇など、雇用のあらゆる場面が対象です。
どの法律が適用されるかは、職場が連邦管轄か州・準州の管轄かで決まります。
| 職場 | 法律 | 窓口 |
|---|---|---|
| 銀行、航空、通信、州をまたぐ輸送などの連邦管轄の職場、連邦政府 | カナダ人権法(Canadian Human Rights Act) | カナダ人権委員会(Canadian Human Rights Commission) |
| 飲食店、小売店、ホテル、一般の会社などほとんどの職場 | 各州・準州の人権の法律 | 各州・準州の人権委員会や人権審判所 |
連邦管轄の業種は「州ごとの雇用基準」と「連邦管轄の職場」で扱います。
連邦:カナダ人権法
カナダ人権法(新しいタブで開く)は、差別が禁じられる理由(prohibited grounds)として、次のものを挙げています。
- 人種、国籍または民族的出身、肌の色、宗教
- 年齢、性別、性的指向、性自認・性表現
- 婚姻の状況、家族の状況、遺伝的特徴、障害
- 恩赦を受けた、または記録停止となった犯罪歴
これらを理由に、雇うことや雇い続けることを断ったり、働いている人を不利に扱ったりすることは差別とされます。雇用に関わる場面で、これらを理由に嫌がらせをすることも禁じられており、セクシャルハラスメントは、禁じられた理由による嫌がらせとみなされます。
申し立ては、カナダ人権委員会に行います。法律は、原則として問題の出来事から1年以内に申し立てるよう定めています(委員会が事情に応じて認めれば、それより長い期間も可能)。
州・準州ごとの違い
BC・アルバータ州・オンタリオ州・ケベック州の、差別・嫌がらせの申し立ての窓口と期限です(2026年10月時点)。
| BC | アルバータ州 | オンタリオ州 | ケベック州 | |
|---|---|---|---|---|
| 法律 | BC人権法(Human Rights Code) | アルバータ州人権法(Alberta Human Rights Act) | オンタリオ州人権法(Human Rights Code) | ケベック州人権憲章(Charte des droits et libertés de la personne) |
| 差別・差別にもとづく嫌がらせの窓口 | BC人権審判所 | アルバータ州人権委員会 | オンタリオ州人権審判所(HRTO) | 人権・青少年の権利委員会(CDPDJ) |
| 期限 | 出来事から1年以内 | 出来事から1年以内 | 出来事から1年以内(続いたときは最後の出来事から) | 出来事から3年以内(市や警察が相手のときは6か月以内)。2年を超えると扱われないことがある |
| 職場の嫌がらせ全般 | WorkSafeBC(労働安全) | ― | ― | CNESST(心理的ハラスメント。最後の出来事から2年以内) |
ほかの州・準州は各州の窓口へ。
オンタリオ州
オンタリオ州人権法(Human Rights Code)(新しいタブで開く)は、雇用で平等に扱われる権利を定め、人種、祖先、出身地、肌の色、民族的出身、市民権、信条、性別、性的指向、性自認、性表現、年齢、犯罪歴、婚姻の状況、家族の状況、障害を理由にした差別を禁じています。
職場で、雇用主や上司、ほかの従業員からこれらの理由で嫌がらせを受けない権利もあります。法律は嫌がらせ(harassment)を、相手が嫌がることを知っている、または当然知っているはずの、迷惑な発言や行為を繰り返すことと定めています。妊娠を理由にした扱いの違いは、性別による差別に含まれます。権利を主張したことへの仕返し(reprisal)も禁じられています。
差別を受けたと思う人は、オンタリオ州人権審判所(Human Rights Tribunal of Ontario(新しいタブで開く)、HRTO)に申し立てます。人権法第34条によると、期限は問題の出来事から1年以内、一連の出来事が続いたときは最後の出来事から1年以内です。期限を過ぎても、遅れが誠実な理由によるもので、関係する人に大きな不利益が生じないと審判所が認めれば、申し立てられることがあります。法律の助言や手伝いは、人権法律支援センター(Human Rights Legal Support Centre、HRLSC)で受けられます。
アルバータ州
アルバータ州人権委員会(Alberta Human Rights Commission)の申し立てのページ(新しいタブで開く)によると、差別的な扱いを受けてから1年以内に申し立てます。自己診断を済ませてから申し立ての書類を出し、手数料はかかりません。保護される理由のページ(新しいタブで開く)は、人種、肌の色、宗教的信念、性別、性自認・性表現、性的指向、年齢(18歳以上)、身体・精神の障害、祖先、出身地、婚姻の状況、家族の状況、収入源を挙げ、雇用(採用、解雇、配慮、同一賃金)にも適用されるとしています。
ケベック州
ケベック州では、差別や、差別の理由にもとづく嫌がらせは、人権・青少年の権利委員会(Commission des droits de la personne et des droits de la jeunesse、CDPDJ)が扱います。CDPDJの申し立てのページ(新しいタブで開く)によると、期限は出来事から3年以内、市や警察が関わるときは6か月以内です。出来事から2年を超えると、委員会が扱わないと決めることがあります。申し立ては無料で、弁護士は要りません。ケベック州人権憲章が挙げる差別の理由には、人種、肌の色、性別、性自認・性表現、妊娠、性的指向、婚姻の状況、年齢、宗教、政治的信条、言語、民族的・国の出身、社会的な状況、障害などがあります。
差別の理由と関係のない職場の嫌がらせは、ケベック州の労働基準法(N-1.1)(新しいタブで開く)の「心理的ハラスメント(psychological harassment)」として、CNESST(Commission des normes, de l’équité, de la santé et de la sécurité du travail)に申し立てます。法律は、繰り返される敵意のある、または望まれない言動で、働く人の尊厳や心身を傷つけ、有害な職場環境をもたらすものと定め、性的な言動も含むとしています。一度だけでも重大で長く続く害があれば当たります(第81.18条)。申し立ては、最後の出来事から2年以内です(第123.7条)。
ブリティッシュコロンビア州(BC)
BC人権法(Human Rights Code)(新しいタブで開く)は、先住民であること、人種、肌の色、祖先、出身地、政治的信条、宗教、婚姻の状況、家族の状況、身体または精神の障害、性別、性的指向、性自認・性表現、年齢、仕事に関係のない犯罪歴を理由に、雇用で差別することを禁じています。申し立ては、問題の出来事から1年以内にBC人権審判所(BC Human Rights Tribunal)に行います。
人権の理由によらないハラスメント
差別の理由と関係のない、いじめや嫌がらせもあります。これは州・準州の労働安全の制度で扱われることがあります。たとえばBCの労災・安全の機関 WorkSafeBC のいじめと嫌がらせのページ(新しいタブで開く)は、相手を辱めたり威圧したりすると分かっている、または当然分かるはずの行為を、いじめと嫌がらせとしています。ただし、雇用主や上司が仕事の管理や指示として合理的に行うことは含まれません。
WorkSafeBCによると、雇用主は、申告の受け付けと調査、対応、記録の手順を作り、実行する責任があります。働く人は、まず雇用主に報告し、対応が不十分なら WorkSafeBC の相談窓口(Prevention Information Line)に連絡できます。労働安全の制度は「職場の安全と労災」で扱います。
手順
- 何があったかを、日時、場所、相手、言われたことやされたこと、見ていた人とともに記録する。メールやメッセージは保存する。
- 職場の方針に沿って、上司や人事など社内の窓口に報告する。
- 職場が連邦管轄か、州・準州の管轄かを確かめる。
- 差別の理由(人種、出身、性別、障害など)が関わるときは、管轄の人権委員会や人権審判所に申し立てる。期限があるため早めに動く。
- いじめや嫌がらせ全般は、州・準州の労働安全の機関にも相談できる。
- 判断に迷うときは、法律の相談窓口や弁護士に相談する。
日本とのちがいと注意点だよ!
- 日本では、厚生労働省(新しいタブで開く)によると、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどの防止のための措置が、法律で事業主の義務とされています。カナダでは、差別の理由によるハラスメントは人権の法律、それ以外のいじめは労働安全の制度と、扱う仕組みが分かれていることがあります。
- 窓口と期限は、職場が連邦管轄か州・準州の管轄かで変わります。BC・アルバータ州・オンタリオ州の人権の申し立ては原則1年以内、ケベック州は3年以内(2年を超えると扱われないことがある)、連邦も原則1年以内です。
- オンタリオ州人権法は、雇用で平等に扱われることを「すべての人(every person)」の権利として定めています。就労許可で働く人の相談先は「外国人労働者の権利と相談先」で扱います。
- 自分の場合にどの手続きを使えるかは、各窓口や弁護士に相談します。
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