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仕事・税金 / 働く人の権利

チップの扱いと雇用主の取り分(Tips and gratuities for workers)

ワーホリ留学在住 オンタリオ州ブリティッシュコロンビア州ケベック州
ひとことで言うと

オンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州(BC)、ケベック州では、客が払ったチップは働く人のもので、雇用主は原則として取り上げられません。従業員どうしでチップを分けるしくみは州ごとに決まりが違います。ケベック州にはチップを受ける人の最低賃金があります。チップは所得として申告します。

目次
  1. チップは働く人のもの
  2. 雇用主が差し引けるもの
  3. チップ・プール(Tip pool)
  4. オンタリオ州での受け取り方
  5. ケベック州のきまり
  6. チップと最低賃金
  7. チップと税金
  8. 手順
  9. 費用
  10. 日本との違い・注意点
TIP TIP? 15%18%20%
ここは大事だよ

条件や金額は変わることがあります。手続きの前に、必ず公式の窓口やページで最新の情報を確認してください。個別の判断は、登録された専門家に相談してください。

レストランやカフェ、ホテルなどで働くと、客からチップ(tip、gratuity)を受け取ることがあります。この記事では、働く人の立場から、チップが誰のものか、雇用主が何をしてよいかを、オンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州(BC)、ケベック州の雇用基準をもとにまとめます。客としてのチップの払い方は「チップの相場と払い方」で扱います。

チップは働く人のもの

オンタリオ州の雇用基準法(Employment Standards Act、ESA)の案内(新しいタブで開く)と、BCの雇用基準法(新しいタブで開く)第30.3条は、どちらも次のことを禁じています。

  • 雇用主がチップを取っておくこと(withhold)
  • チップから差し引くこと(deduction)
  • 働く人にチップを返させたり、渡させたりすること

オンタリオ州では、食器を割ったり、レジのお金が足りなかったりしたことを理由に、チップから差し引くこともできません。また、チップを受け取る権利は雇用基準として守られており、働く人が書面や口頭で「チップはいらない」と同意しても、その同意は効力をもちません。

「チップ」に含まれるもの

オンタリオ州では、次のようなものもチップとして扱われます。ふつうの人が「従業員が受け取るもの」と考える支払いであることが前提です。

  • テーブルに置かれた現金
  • クレジットカードやデビットカードの支払いに上乗せされたチップ
  • 宴会場などがかけるサービス料(service charge)

BCの法律も、雇用主がかけるサービス料をチップ(gratuity)に含めています。

雇用主が差し引けるもの

例外として、次の場合は雇用主がチップを取っておいたり差し引いたりできます。

例外オンタリオ州BC
法律で決まった天引き・裁判所の命令できるできる
チップ・プールで従業員に分け直すできるできる
クレジットカードの手数料の一部できる(下を参照)州の雇用基準の窓口で確かめる

オンタリオ州のクレジットカード手数料

オンタリオ州では、客がクレジットカードで払ったチップのうち、カード会社の手数料に当たる一部はチップに含まれません。差し引ける額は、次のうち大きいほうです。

  • チップの額 × カード会社が取る手数料の割合
  • チップの額 × 1.5%

デビットカードの手数料など、クレジットカード以外の手数料は差し引けません。

チップ・プール(Tip pool)

チップを集めて、従業員の一部または全員で分け直すしくみを「チップ・プール」といいます。オンタリオ州とBCのどちらでも認められています。誰が加わるか、どう分けるかは、雇用主が決めます。

雇用主が自分でチップ・プールから受け取れる場合は限られます。

州雇用主がチップ・プールに加われる条件
オンタリオ州個人事業主・パートナー・取締役・株主で、チップを分ける従業員と同じ仕事をふだんからかなりの程度している場合
BCチップを受けた従業員と、実質的に同じ仕事をしている場合

オンタリオ州では、2024年6月21日から、雇用主や取締役・株主がチップ・プールに加わる方針がある職場は、その方針を職場の見やすい場所に掲示しなければなりません。

オンタリオ州での受け取り方

オンタリオ州では、2024年6月21日から、雇用主はチップを次のどれかで渡します。

  • 現金
  • 小切手
  • 口座への振り込み(Interac e-Transferを含む)

振り込みの口座は、働く人が選んだ、本人名義の口座でなければなりません。現金か小切手で渡すときは、職場か、働く人が書面(電子的なものを含む)で同意した場所で渡します。

ケベック州のきまり

ケベック州では、労働基準法(Loi sur les normes du travail)第50条がチップ(pourboire)について定めています。州の労働基準を扱う CNESST(Commission des normes, de l’équité, de la santé et de la sécurité du travail)のチップのページ(新しいタブで開く)とあわせると、次のとおりです。

  • チップは、サービスをした働く人のものです。基本の賃金の額やサービスの種類は関係ありません。
  • 請求書に加えられたサービス料(frais de service)もチップに含まれます。事務手数料(frais d’administration)は含まれません。
  • 客がカード端末で払ったチップやサービス料を雇用主が受け取ったときは、サービスをした人に全額を渡します。
  • 雇用主は、チップの一部でも取っておけません。レジのお金が合わない、皿を割ったといった理由での懲戒としても同じです。サービスをした人以外に渡すこともできません。
  • 雇用主は、クレジットカードの利用にかかる手数料を働く人に払わせることはできません(第50.1条)。

チップの分配の取り決め(Convention de partage des pourboires)

ケベック州では、チップを受ける働く人どうしが、分け方を決める「チップの分配の取り決め(convention de partage des pourboires)」を作れます。オンタリオ州やBCのチップ・プールとは、決める人が違います。

項目ケベック州の決まり
誰が決めるかチップを受ける働く人が、自由な意思で決める
成り立つ条件チップを受ける人の過半数(50%+1人)が同意したとき。口頭でも書面でもよい
雇用主分配を強制できず、取り決めづくりに関わることもできない。取り決めができたら従う。働く人に頼まれれば、取り決めに沿って配ることはできる
新しく入った人その職場の取り決めに従う。取り決めに加わることを採用の条件にできる

チップと最低賃金

オンタリオ州でもBCでも、チップは雇用基準法上の「賃金」に含まれません。オンタリオ州では、最低賃金、解雇手当、休暇手当、祝日の賃金、残業代の計算に、チップは入りません。雇用主はチップとは別に、最低賃金以上の時給を払う必要があります(「州ごとの最低賃金」)。

ケベック州でも、雇用主はチップを数えずに最低賃金以上を払います。ただし、ケベック州には、ふだんチップを受ける人のための「チップを受ける人の最低賃金(salaire minimum au pourboire)」があり、CNESSTのページ(新しいタブで開く)によると、一般の最低賃金より低く決められています。

ケベック州の最低賃金(2026年5月1日から)時給
一般の最低賃金C$16.60
チップを受ける人の最低賃金C$13.30

チップを受ける人の最低賃金が使えるのは、ふだんチップを受け取り、次のような場所で働く人だけです。

  • レストラン(ファストフード店や、客が先に商品を選んで払う店を除く)
  • 持ち帰りの食事を売る・届ける・出す店
  • その場でお酒を出して飲ませる店
  • 観光客向けの宿泊施設(キャンプ場を含む)

ケベック州では、祝日の手当など一部の手当を、税法にもとづいて申告・配分されたチップを加えた額で計算する決まりもあります(労働基準法第50条)。

チップと税金

カナダ歳入庁(CRA)の確定申告の10400行のページ(新しいタブで開く)は、T4(給与の源泉徴収票)に載っていないチップなどの収入を、確定申告の10400行に書くよう案内しています。受け取った額は、自分で記録しておく責任があります(「確定申告の基本と期限」)。

給与からの源泉徴収(雇用主の側)

CRAの雇用主向けのチップのページ(新しいタブで開く)は、チップを2つに分けています(2026年10月時点)。

区分例源泉徴収とT4
雇用主が管理するチップ(Controlled tips)請求書に必ず付くサービス料、雇用主が決めた分け方で配るチップ、いったん雇用主の口座に入れてから払うチップ所得税、雇用保険(EI)の保険料、カナダ年金制度(CPP)の保険料を差し引く。T4に載る
客から直接受け取るチップ(Direct tips)テーブルに置かれた現金、カードで払われたチップを雇用主が現金で全額渡す、働く人どうしで分け方を決めるチップ・プール差し引かない。T4に載らない。働く人は様式CPT20でCPPの保険料を払うことを選べる

Direct tipsは、上の10400行で自分で申告します。ケベック州の飲食店などでは、働く人が直接受け取ったチップを雇用主に申告し、雇用主が所得税とEIの保険料を差し引くしくみがあると、CRAは説明しています。

手順

チップの扱いに疑問があるときの流れです。

  1. 受け取ったチップの額と日付、チップ・プールの分け方の説明を記録しておく。
  2. 給与明細と見比べ、差し引かれているものがないか確かめる(「給与明細の読み方と天引き」)。
  3. 雇用主に、チップ・プールのきまりや差し引きの理由を聞く。
  4. 解決しないときは、州の雇用基準の窓口(オンタリオ州はEmployment Standards、BCはEmployment Standards Branch、ケベック州はCNESST)に相談する。オンタリオ州では、不当に取られたチップは、雇用主が払うべき未払いの賃金と同じように取り立てることができます。

費用

州の雇用基準の窓口への相談に費用はかかりません。オンタリオ州のクレジットカード手数料の差し引きは、チップの額に手数料の割合か1.5%のどちらか大きいほうを掛けた額までです。ケベック州のチップを受ける人の最低賃金は時給C$13.30です(いずれも2026年10月時点)。

日本とのちがいと注意点だよ!

  • 日本ではチップの習慣がほとんどありませんが、カナダの飲食店などでは、チップが収入の一部になることがあります。
  • チップのきまりは州・準州ごとに違います。この記事はオンタリオ州、BC、ケベック州のきまりです。ほかの州・準州で働くときは、その州・準州の雇用基準を確かめます(「州ごとの雇用基準」)。
  • 雇用主から「チップは店のもの」と言われても、オンタリオ州、BC、ケベック州では、法律で認められた場合を除いて、チップは働く人のものです。
  • ケベック州でクレジットカードのチップから手数料を引かれていたら、オンタリオ州とは決まりが違う点に気をつけます。
  • チップも所得です。確定申告のときに申告漏れがないようにします。
  • 個別の判断は、州の雇用基準の窓口や弁護士に相談してください。

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